リスト更新⑤2016年06月10日 11時50分25秒

同率11位となる3本所有の、もう一方はCitronでした。

製作家のハービー・シトロン氏は、ウッドストックの自宅を訪ねたことがあります。
そこで彼の作ったBO-4という楽器を直接売ってもらいました。

プレーンなメイプルトップに、ホワイトリンバボディ、ネックはメイプルで指板がウェンジでした。
近郊に住むマイケル・トバイアス氏の好みそうな材の組み合わせで、何かしらの影響を感じます。
アメリカの個人製作家は、これくらいの大御所となっても触発され合って切磋琢磨している様子を覗えるのが興味深いです。

今はシトロンPUを自家製で用意しますが、当時は既成のパーツを乗せていましたので、ここにはアクティブサーキットと共にEMGが付けられていました。
とても好きな楽器でしたが、G線Eb付近にデッドスポットが目立つため、これを手放しました。
泣く泣くというやつです。

持っていた楽器のボディ材は、それまでセン、アルダー、アッシュ、マホガニー、バスウッドといったものが使用されていました。
ウォルナットなども市場にありましたが、自分で買ったことはその時点ではなく、このシトロンのリンバ(コリーナ)がいわゆるエキゾチック・ウッドとしては初になります。

というわけで、これを契機に木材志向を強めてしまいます。
2002年のことです。
木材事典的な書物を、洋書メインにずいぶん集めました。
どんな材がどんな音の楽器となるのか探求を始めたのが、100本を超える履歴を形成する発端となりました。
ハービーに会ってしまったのが間違いの始まりだったのです。

彼はたしか建築家となるべく勉強をした人で、精密な図面を引くのは得意とするところなはずです。
全ての楽器が、仕入れた木材から自ら切り出し、顧客の細かいリクエストを反映した設計図通りに組み上げられます。
決して多作家ではありませんが、著名な楽器奏者の信頼を得て、半世紀の経験を持ってしても日進月歩を止めません。
名人によってノミとカンナで削り出されたネックやボディの感触は、コンピューターに管理され量産される大企業の製作物とはまるで異なり、筋肉質なアスリートの肌のように研ぎ澄まされ、生々しく、訴えかけてくるものがあります。

33インチ、22フレット、弦間19mmで、その後BO-5をオーダーします。
それだけ(とカラー)を伝え、仕様はおまかせしたところ、メイプルトップ/アッシュバック/メイプル3ピースネック/マッカサーエボニー指板/シトロン・ハンドメイドPU/アギラープリアンプという仕様でできあがってきました。
タグにはわたしの40数回目の誕生日に当たる日付が刻まれていました。

音の方は、かつてのBO-4ほどには気に入らず、しかし楽器としての愛着はそれ以上のものがあって、なんとか好みに近づけるべくサーキットとPUを相当数試してみました。
最近になって、ノードストランドで特注したPUが満足のいく音を出してくれ、サーキットはパッシブのままですが、漸くまた仕事で使える気分になってきました。

もう1本のシトロンについてはまた別の機会に話しましょう。