オケの録音再び2006年11月08日 00時15分52秒

正面に管楽器類がずらりと並び、アコベのトップはブルブルと共振する。

5月に製作されたアルバムの続編の録音に再び参加した。内容は毎度おなじみのオーケストラサウンドで16曲を2日で録り終えるというもの。初日は主に管楽器が主体のもの、2日目は弦楽器主体のもので、エレキベースはピアノ、ギター、ドラムスとともに全曲での演奏がある。

2年前にこの手の録音に関わった時はKen SmithのBSR5-JQ 20th Anniversary を借りた。非常にオーソドックスでありながら、程よい重心の低さと解像度を備え、キルト・メイプル単板ボディにJBシェルのPUがよくマッチしたその楽器を、その後市場で探し求めたものの、限定生産品であり、入手困難なまま現在に至る(現在新品で変えるBSR-JはPUとサーキットが向上したが、アニバーサリーモデルとは指板材とネック材が異なる)。

依頼筋が同じだから、音楽の内容こそ似たようなものだが、2年前と今年のものとはレコード会社が異なり、スタジオやエンジニアも違う。また、昨年暮れから主にF BassのBN5を使用するようになって、5月の録音ではそれと、同じFのBN4(ただしアルダーボディ)を手配し、使用楽器も異なる。また当時のブログに書いた通り、Daniel FernandezのAcoustic 6も直前に購入して、早速使ってみた。

BN5の、アッシュボディにマッカーサ・エボニーを貼り付けた仕様は、堂々たるソリッドな低音と切れのいい高音域が魅力だが、今回の録音で新たな弦との組み合わせを試そうと、Ken Smithのテーパーコア、MLを、録音に先だって、約2週間ほど、いつも使用しているR.Cocco(ゲージセットは0.045ー0.100の4弦セットに0.125のローBを組み合わせたカスタム)と比較した。

どちらもステンレス弦であり、それぞれに美点があるが、まずSmithの方が、細かく調整された半端なゲージでセットが組んであり、楽器に張った時のテンションバランスがとてもいい。ただ、当のKen Smithの楽器に使用した際にも、ファクトリー・スタンダードであるステンレス弦よりも、"Burner"シリーズ(ニッケル)の方が好きだった。同様にBN5でも、どうもワイドレンジで、フラットな特性が、逆にやや神経質に感じさせ、極端にいえば弾き辛くすらあった。Coccoではアタックから太さがあり、人によってはドンシャリと形容するけれど、BNの美点を押し上げ、唯一無二の強力なトーンを導き出す要因であったことが確認できた。

今回の録音では使っていないが、最近仕事で何度か弾いているF BassのAC(フレットレス)にBurnerが張ってあり、若干高域不足を感じるため、むしろこちらにSmithのステンレスが合うのではないかと思う。余談だが。

BN5は結局、Coccoに替え、5月のときと同じセット・アップで臨んだ。スラップ用として4弦の楽器を待機させる必要がある分は、最近伝えた通り、アクティブ化&BFTSインストールを施した国産のJBレプリカ(以後JB)を持っていった。前回のBN4がアルダーボディであったため、今回もまたアッシュ&アルダーの2材で楽器を用意することとなり、それが実際に大きく役立った。

JBに入れたプリアンプは、デンマークのCelinderという楽器に搭載されているのと同じGreen Gloveのもので、PUはKent Armstrongによるカスタムで、これら電気系統はCelinderとほぼ同じ(ミーハーだからブリッジもHipshotのCタイプに交換したが、ペグは径が合わずGotohのまま)仕様になった。

Celinderは、NYではSadowskyからの乗り換えも少なくないと話に聞く、とても良くできたFenderレプリカだが、製品供給がまるで安定せず、ユーロ高と併せてプレミアムがついてもおかしくない入手困難な状態になっている(高いといってもSadowsky NYCよりも大分安く、Metro Lineの上くらいの価格だが、ではその高いNYCがCelinderよりもそこまで良いのか、と言えば疑問だ、というのがNYでの声。もちろんどちらが上というより、各個人の主観によるものだから風評に過ぎない)。

もちろん全く成り立ちの異なる楽器に、同じ電気系統を乗せて同じ音がするわけは無いし、Celinderが買えないから、という理由による改造でもない。使っていない楽器を、最近の情勢に合わせるべく試行錯誤したまでだ(実際2年前の録音にスタンバイさせたが出番がなかった)。

初日の8曲のうち、順番で言うと最初2曲に、まずアルダーのJBを使った。曲想に応じて使い分けたつもりだが、3曲目から6曲目までをアッシュのBN5を使った。7曲目が「クレオパトラの夢」で、これはテンポの速いジャズであることはご承知と思うが、BNでがんがん弾いて悦に入っていたのだった。どうだ、とばかりに。

するとコンソールの方で、何やらディレクター達が密談していて、その結果、ドラマーやギタリストに指示が飛ぶ。セッションが再開され、1度録音してみるが、まだ問題が解決していない風のポーズがはさまれる。もっとリズムを軽やかにしたいんで、音を短く切ってくれますか、というのが次なる、ベーシストへの指示であった。

その瞬間、問題の焦点を悟った。では、今の楽器が重い音がするので、軽めの音がする楽器に替えてみていいですか? と提案して、アルダーのJBに持ち替えて録音したセッションが採用となった。ようはトーンだった。

録音の様々な局面で、フェンダーの楽器が必要となることがある。それとは若干ニュアンスが違って、非フェンダーだからNGということではなかったが、やはりジャズ・チューンにフェンダー・ジャズ・ベースが使われてきた意味は深いのだ。楽器のトーンがアンサンブルのどの位置に収まるか、というのは非常に重要で、極論するとアルダーの位置とアッシュの位置があって、それは音楽性を左右するほどのものだ。これはEQ等の処理で片づく問題でも無さそうだ

音色のバリエーション、という言葉を良く使うけれど、1本の楽器で多彩な音が出せるといっても、通常はその中のベストなもので勝負していくことになる。そのベストを見いだすためにコントロールが豊富なほうが見つけやすいという考えもあるが、3バンドのEQとかタップスイッチとか取り揃えられても、せいぜいシチュエーション(言い換えれば楽器を鳴らす環境ースタジオとかホールとか)に対応するための音色変化が得られるくらいのものだ。

電気の力でいじることのできない部分において、どう音色が練られたかが、楽器選びで重視されるポイントだ。楽器のコンストラクションとマテリアル、PUの方式と搭載位置、その先にどれだけ変化を与える要素を与えようが、この部分で形成される性格は変えられない。

というわけで、図らずも役に立ったJBは、先日の舞浜のディナーショウでスーパーサブとして活躍して以来、頼もしい戦力となっている。ちなみに弦はSmithのテーパーコア(ステンレス)ML(0.044ー0.102)が張ってあるけれど、これももしかしてBurner(ニッケル)の方が好みかもしれない。パッシブだが、生徒のJapan FenderにBurnerを勧めたら、結果、非常に良い音になった。

ラストの曲ではアコースティックベースを使用した。前回のレコーディングでスポンジミュートでサスティンを殺したのが、できあがったCDで線の細い音にしてしまった反省から、ノーミュートでリベンジを期した。この楽器をライブでよく使うようになって、ライン出力に思った以上のウッドベース的ニュアンスが出ていることが判明し、若干バスをブースとしてやることで録音にも良いのではないかと考えたが、結果が楽しみだ。ディレクションの人々から、特に何も言われなかったので、これはこれで良かったと思う。

ブラジリアン・リズムの曲でBN5を使って派手にスラップしていたら、またしてもコンソールルームでの密談が長かった(録音の順序から言うとこっちが先だけど)。このときは、あぁー来るかなぁーと演奏スタイルの転換を求められるかと想像したら案の定であり、続くセッションで地味ーに弾いてみたらプレイバックして納得。譜面にはコードしかなかったから、主張が過ぎた。確信犯的に、言われたら直せばいいやというアプローチだったが、かくしてその通りになった。

あと1日、8曲は大変だが半分終わったことだし、気楽に構えて乗り切ろう。何よりもまず精神を安定させるのが大切だよね。

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